なんでも機械化する、という罠
こんにちは。
前回、タマネギの収益性の話で、機械化の話をしました。
「機械化」っていい響きですよね。
機械化したら、
〇手作業が減る
〇人件費削減できる
〇規模拡大ができる
というメリットがあります。農業に関しては、国や県のトレンドも「機械化一貫体系」の推進です。
機械化に補助金を出すのも今は主流ですね。
※「機械化一貫体系」って、播種から収穫まで機械化することです(多分)。
なんかあれですよ、「機械化一貫体系」って言っとけば間違いない、という風潮すらあるんですよ。
「IT化」「AIの導入」「コンプライアンス」と一緒ですよ。これ言っとけば誰も反論してこないんですよ。知らんけど。
県の農業関係者とかも口を開けば「機械化ガー」とか「機械化一貫体系ガー」とか言ってますよ(自分らリスク負わんやろ)。
僕もですね、加工用タマネギを「機械化一貫体系」でやろう!と言われた時は、心躍りましたよ。
でもですね、「機械化一貫体系」と聞いたときに真っ先に思ったのは、
「これで楽に農業できる!!!」
なんですよ。実際、「規模拡大」とか「人件費削減」とか後付けの理由なんですよね。これは僕だけではないと思います。だって、手作業の収穫とか大変だもん…。
こんな感じで、楽したいからすぐに機械化に走ってしまうんですけど、もちろん落とし穴もあります。
それは、
使わなくても機械代はかかる。
ということです。
「いや、当たり前だろ」という声聞こえてます…。当たり前なんですけど、機械って稼働させてナンボなんですよ。固定費だから、毎年払わないといけないんです(リースの場合)。借入して機械導入しても、数年後には払わないといけないんです。
「そんなこと分かってるよ」という声聞こえてます…。そうなんですけど、もし計画通りに生産ができなくて、機械が稼働しなかったらどうしますか?台風で野菜がダメになったらどうしますか?新型コロナが流行して、野菜が売れなかったらどうしますか?
いくら契約栽培でも、売れない時は売れません…。
機械を計画通り稼働させて収益を上げるって結構難しいです。農業機械の耐用年数は7年で計算するんですけど、7年間、確実に計画どおり稼働させられますかね。補助事業で導入したけど、3~4年しか使わずお蔵入りみたいな機械もあります。性能が十分でなく、修理代ばかりかかる機械もあります。
これが手作業の多いキャベツだったらどうでしょうか。もし台風被害等で収穫できなければ、収穫に人件費をかける必要がないんです。その人手を他の作業に回せば、人件費がすべて無駄になることはありません。
その他にも、機械化には規模拡大が前提なので、管理作業の量が増えます。
耕耘作業が増えます。草刈りが増えます。草取りが増えます。機械専用トレイの洗浄が増えます。機械のメンテナンス時間が増えます。機械の置き場所も増えます。
機械化前と同じ人数でできれば良いですが、新たに従業員を雇う場合が多いです。
機械化と人件費削減は、必ずしもトレードオフではないんです。
機械化に伴って、人件費が必ず減少するとは限らないです。
機械化のデメリットをまとめるとこんな感じです。
〇機械代は使わなくてもかかる
〇規模拡大をしなければならない
〇新たな人件費が発生する場合がある
もちろん機械化のメリットが大きい場合もあるので、5年後、10年後まで考えて機械化していきましょう。
「楽になるから」と思ったら危険信号ですよ。
おしまい。